私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「あるスキャンダルの覚え書き」

2007-06-11 08:00:39 | 映画(あ行)


2006年度作品。イギリス映画。
定年も近いオールドミス教師バーバラは新任の女教師シーバに近付き、友情を結ぶ。ある日、バーバラはシーバが15歳の教え子と関係を結んでいることを知る。シーバはそのことをバーバラに打ち明けるが…
監督は「アイリス」のリチャード・エアー。
出演は「恋に落ちたシェイクスピア」のジュディ・デンチ。「エリザベス」のケイト・ブランシェット ら。


主人公のバーバラはなかなか辛らつな女性だ。
冷静な観察者といった雰囲気はあるのだが、その物言いは毒がある。だが教師らしく公正に物事を取り扱うという感じがした、最初の内は。
だが物語が進むにつれて徐々に彼女の支配欲と独善の様が立ち上がってくる。

彼女は恐らく男性経験のないオールド・ミスだ。その状況には同情するし、愛されたことがないゆえに愛し方をまちがえてしまっているという点には考慮すべき点はあるかもしれない。
しかしそれが独善と化していることに明確な醜さがにじみ出ている。
自分の都合を優先し、思いやっている振りをしながらあくまで自分の欲求を貫き通しているだけなのだ。その様子はどこか狂気じみて少しだけこわい。

後半に事態が明らかになったとき、シーバの夫が、どうして頼ってくれなかったのだ、って感じのことをシーバに言うシーンがある。
そこに主人公のバーバラとの明確な違いが浮かび上がってくる。
バーバラは自分が裏切られたときは、相手を自分の支配下に置こうと躍起になっていた。それに対し、夫は自分を裏切った妻のことを責めながらも、裏切った相手のことを受け入れたいと願っている。
つまり愛情のベクトルの方向がまったく違っているのだ。

人間は確かに醜いかもしれないけれど、それを愛情という不完全なものが補ってくれるかもしれないな、とそれを見て少しだけイタイことを考えたりした。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・ジュディ・デンチ出演作
 「プライドと偏見」
・ケイト・ブランシェット出演作
 「バベル」
・ビル・ナイ出演作
 「ナイロビの蜂」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「プレステージ」 | トップ | 「300 <スリーハンドレッド>」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(あ行)」カテゴリの最新記事